2004年12月30日

届かない悲鳴:施設虐待の深層 3年で22職員退職、入所者の状態把握に支障

 ◇虐待の背景に

 福岡県頴田(かいた)町の知的障害者更生施設「カリタスの家」をめぐる虐待問題で、6年前の同施設開設直後から職員が定着せず、過去3年間で22人が退職していることが分かった。直接入所者にかかわる職員は通常約20人で、3年間でほぼ全員が入れ替わった形。退職者が出る度、求人を繰り返しているが、専門家は「これでは個々の入所者の状態を把握出来ず、施設の体を成しているとは思えない。“素人集団”が虐待の生まれる背景でもある」と指摘している。

 関係者によると、98年の開設当初、利用者47人(入所34人、通所10人、短期入所3人)に対し、職員は約20人いた。その後、次第に退職者が目立つようになり、02年に5人▽03年8人▽04年は12月20日現在で9人が退職した。過去3年間で退職者は計22人に達している。

 退職理由の多くは原田秀樹施設長の施設運営や給与への不満、複数の虐待職員の存在など。

 今年に入って退職した20代の女性は「相次ぐ虐待を施設幹部に抗議しても変わらなかった。入所者に申し訳なく悩んだが、耐えられなかった」と話す。3年前に退職した30代の男性は「利用者を軽んじる施設長の施設運営に納得いかなかった」と打ち明けた。

 同施設は退職者が出るたび、社会福祉協議会主催の就職説明会などに参加。求人を呼びかけ、新卒者や転職者を採用しているが、専門知識や経験が豊富な人からの応募はほとんどないという。

 原田施設長は「職員の定着が求められていることは理解しており、どこかでメスを入れるべきだが、これだけきつい職場で、給料も安いとなると、なかなか思うようにはいかない」と話している。【虐待問題取材班】

 ◇「最悪の状態」--障害者施設の事情に詳しい河東田博・立教大コミュニティ福祉学部教授(障害者福祉)の話

 これほど退職者が相次ぐと、職員は右往左往するばかりで、施設内はまるで素人がかかわっているような状況だろう。このため虐待が再生され、入所者の障害はますます悪化する。最悪の状態だ。

毎日新聞 2004年12月30日 西部朝刊