2004年06月26日

介護保険と障害者支援費の統合 サービスより財政

[クローズアップ2004]介護保険と障害者支援費の統合 サービスより財政

 ◇「団塊の世代」高齢化控え
 00年にスタートした介護保険制度の初の大幅改正となる05年度の改革に向けた動きが本格的に始まった。25日には、社会保障審議会障害者部会が、介護保険と障害者の支援費制度の統合を事実上容認する部会長案を了承した。保険料の徴収年齢を引き下げ、その代わりに若年層の障害者もサービス対象に含めようという案が下敷きになっている。厚生労働省は今秋にも原案をまとめる見通しだが、一部の障害者団体からは両制度の質の違いからサービス後退を心配する声も上がっている。【渋川智明、玉木達也】
 「統合問題について賛否がはっきり書かれていない。これでまともな議論ができるのか」。25日の障害者部会で部会長案が提示されると、委員から声が上がった。京極高宣部会長が「これは限りなく(統合へ)賛成に近い内容」と述べると、委員から批判の声が相次ぎ、京極部会長は「言い過ぎだった」と釈明した。部会長案は統合を事実上認める内容だが、反対論も依然根強いことを印象づけるシーンだった。
 00年の介護保険スタート時に要介護認定者は約218万人だったのが、現在は約367万人。団塊の世代が高齢化していくと、介護保険財政の破たんは目に見えている。04年度の保険給付は5・5兆円だが、25年度には20兆円に膨れる。
 介護保険法では、3年で保険料を改定し、5年で制度内容を見直すことになっている。昨年4月の改定では、65歳以上の保険料が全国平均で13・1%アップし、月額3293円になった。保険者である市町村も赤字財政のところが増えている。
 一方、税財源で運営されている障害者の支援費は昨年4月に始まった。行政が必要と判断した福祉制度を障害者に与える措置制度から、障害者自らが希望する福祉サービスを選んで業者と契約する制度へと大きく変わった。初年度からホームヘルプなどの利用者が急増し、100億円以上が不足する事態になった。
 厚労省は両制度を統合した場合、介護保険料を徴収する年齢を、現行の「40歳以上」から「20歳以上」に広げたうえ、20歳から必要と認めたサービスが受けられるようにする方針だ。財政の安定を考えての案だが、先行したドイツの介護保険も年齢による制限がないため、日本でも医療保険と同じように20歳以上を被保険者に加えるとの案に理解を示す関係者も多い。
 ◇負担増に警戒感--障害者
 東京都千代田区で今月9日、全国から集まった車イスの障害者ら約700人が介護保険との統合反対を叫んだ。「審議会で強引に統合への議論を進めるのは許せない」「高齢者の介護と、若い障害者のサポートは根本的に質が違う」
 両制度の違いは以前から指摘されてきた。介護保険は高齢者が、要介護度による支給限度額の範囲内でサービスを受けられる。サービスの種類は、ケアマネジャーのケアプランに沿って、利用者が選択できる。一方、障害者支援費では、障害者自身がどのサービスを選ぶかを決めるが、ケアマネジメントは制度化されていない。
 介護保険では、身体の状態や痴呆の有無などをもとにコンピューターなどによる判定で要介護度が決まる。しかし、障害者のケアは日常生活上のハンディを補うだけでなく、社会参加や自立を目指す障害者のサポートが求められる。現行の要介護認定基準をそのまま障害者に適用すると、要介護度が低いランクに判定される恐れも指摘されている。
 また、利用者負担については、介護保険は原則として費用の1割負担(応益負担)だが、支援費は負担能力に応じた徴収(応能負担)だ。自立して暮らす障害者の多くが経済的に苦しい立場にあり、統合による負担増への警戒感は強い。
 ◇賛否もいろいろ
 日本経団連は4月、介護保険と支援費の統合について「若年障害者には、就労支援、所得保障をはじめ、高齢者に比べ多様なニーズがあり、現行の介護保険制度の枠組みの中で一体的・効果的に障害者福祉が機能するのかどうか疑問」とする意見書を発表、統合に反対の立場を示した。保険料は雇用主と社員が折半して負担するため、経済界にはこれ以上負担が増えることへの反発が根強い。
 一方、連合は、「介護とは、高齢者特有のニーズではなく、疾病や交通事故などによる後遺症でも必要となるものであり、本来は年齢や事由を問うものではない」として、統合に賛成している。
 身体障害者などのグループに反対意見が多い中、知的障害者の親など約30万人で組織する「全日本手をつなぐ育成会」(東京都港区)は「両制度とも自己決定を尊重する理念に基づいている。安定した財源を保障するためには統合は必然」と発表し、意見は割れている。
[毎日新聞 2004年6月26日(土)]

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