2003年12月08日

「安易な施設入所策、人権侵害」知的障害者 賠償求め都をあす提訴

12/8 朝日新聞
「施設の外で暮らせるような支援を十分せず、安易に、しかも遠隔地の施設に入所させたのは人権侵害」として、知的障害者施設の元入所者が9日、東京都を相手に2500万円の賠償を求める訴えを東京地裁に起こす。背景には地域の生活支援よりも施設入所を優先してきた福祉の現状がある。元入所者は「施設から出られない多くの障害者の声を代弁したい」と話している。

訴えるのは社会福祉法人札幌育成園運営の寿都浄恩学園(北海道寿都町)の元入所者で、札幌市在住の松岡敏雄さん(43)。

松岡さん側によると、松岡さんは東京都日野市にある都立の知的障害者施設七生福祉園を90年に退所し、働きながら一人暮らしをしていた。94年、住み込みの職場を解雇され、緊急一時保護という形で七生福祉園に収容された。ところが、都は、同園が定員いっぱいで、都内のほかの施設にも空きがなかったことなどから、同市を通して松岡さんらと相談の上、95年2月から01年5月まで、寿都浄恩学園に入所させたという。

松岡さん側は、地元で暮らせる支援があれば、学園への入所に同意はしなかったとし、「都はホームヘルプなど地域の支援を尽くさず、安易な入所措置を取った」と主張している。

東京都障害福祉部は「訴状を見ていないのでコメントは控えたい」としている。

「脱施設」への支援体制問う

〈解説〉世界的に障害者入所施設の縮小・解体など「脱施設」が進んでいる。日本も、障害のある人が街でともに暮らす「ノーマライゼーション」を政策に掲げているが、実際には障害者が地域で暮らすのを支える体制作りを怠り、入所施設を増やしてきた。その結果、13万人の知的障害者が施設で暮らし、施設から出られる人は年間わずか1%だ。東京に限れば、4千人近くが都外の施設にいる。

政府の新障害者基本計画では「脱施設」が打ち出され、今年4月から、行政が決める措置制度に代わって、本人がサービスを選べることをうたった障害者支援費制度が動き出した。それでも、施設偏重の予算構造は変わらず、地域支援体制の整備は遅れている。今回の訴えは、こうした政府や社会のあり方を問うている。