2003年10月20日
目撃の女性職員が証言 みひかり園第3回公判
毎日新聞
鹿児島県串良(くしら)町の知的障害者更生施設「みひかり園」の虐待事件で、暴行などの罪に問われた前園長の坂元続(つづく)被告(72)の第3回公判が20日、鹿児島地裁であった。検察側証人として、00年8月の虐待事件を目撃した園の女性職員が出廷した。職員が公の場で虐待の実態を語るのは初めて。
女性職員は00年8月、坂元被告が園内の支柱に男性利用者(27)=既に退所=を縛り付けて殴るなどした事件について「男性は(園長に)されるがままだった」などと証言。被害現場が写された写真は「証拠が必要と思い別の職員に撮影してもらった」と話した。さらに「暴力をなくそうと法務局や毎日新聞社に提供した。坂元被告は罪を認めてほしい」と訴えた。
坂元被告は写真で縛られているのは男性利用者と認めたが、「だれかが縛り付ける場面をでっちあげた」と主張。職員たちの目撃証言の信頼性が争点となっており、検察側は別の職員2人の証人尋問を来月10日に行う。
一方、01年9月に園内で同じ男性利用者と別の女性職員(27)を杖(つえ)で殴打した追起訴分の事件の審理もあり、坂元被告は全面否認した。検察側は「被告は水遊びしていた利用者に『座れ』と着席を命じたが、従わなかったため、背かれたと思ってたたいた。かばおうとした職員には『何でお前がすっとよ(かばうんだ)』とたたいた」と動機面を明らかにした。【障害者虐待問題取材班】
「利用者が安心して暮らせる場所になってほしかった」。鹿児島県串良(くしら)町の知的障害者更生施設「みひかり園」の虐待事件の公判で20日、証言した女性職員は、前園長の坂元続被告(72)の虐待を克明に語り、鹿児島地方法務局や毎日新聞社に相談したことも明らかにした。「告発」への偏見を覚悟で、証言台に立った職員は「利用者のために」と念じながら言葉を続けた。
午前10時52分。職員が入廷した。「平常心を保ちたい」という職員の要望で法廷入り口から証言台まではついたてが並べられ、坂元被告や傍聴者から姿は見えないようにされた。検察側の尋問が始まった。男性利用者(27)が縛られているのを見たかと問われ、職員は「はい」ときっぱりと答えた。職員は93年4月の開園と同時に勤務して10年になる。坂元被告に殴られる利用者を見る度、「止めなくては」と思ったが、「刃向かって辞めさせられては、虐待は続く」とちゅうちょした。「待ってて。どうにかするから」。胸の中で繰り返した。証言要請には「家族にまで迷惑をかけないか」と悩んだが、「利用者は被害を訴えられない」と勇気を振り絞った。
法廷で、職員は男性が縛り付けられた写真は、同僚に撮影を頼み、その後法務局や毎日新聞社に提供したものであることを証言。「縛り付けの場面はでっち上げ」という坂元被告の主張に対し、出所を明らかにした。尋問の最後に職員は涙声で「弱い立場の人を助けてほしいだけ。(被告には)自分でやったことを認めてほしい。お願いします」と語った。ついたて越しの坂元被告は視線を落とし、まばたきを繰り返していた。
「施設内虐待」の著者で茅ケ崎リハビリテーション専門学校(神奈川県)の市川和彦専任教員(43)は「虐待を明らかにできるのは、近くにいる職員しかいない。証言者が職場や地域で孤立しない支援が必要で、今回のケースを福祉関係者ら周囲がどう評価するか注目したい」と話す。【障害者虐待問題取材班】